訴訟による言論の圧殺、その後

これも自分の先日のエントリー「訴訟による言論の圧殺」について。

音楽配信メモ」で

と、その後もいくつか長く興味深いエントリが書かれてて、私なんぞが付け加えるようなことは無い。ここを見てこの問題に興味を持った人がいたら(これだけ大きく騒がれている問題を、こんなマイナーな日記で初めて知るなんてこたまず無いとは思うんだけど)、是非「音楽配信メモ」を読んで欲しい。

ただ、既にあちこちで書かれてることと同じでもいいから、ここに「私が」何を思い何に憤ったかだけは書いておく。

自分にとってオリコンのチャートとは

見てない(爆)。というか、JPOP自体あまり聴かないし。オリコンに限らずチャート全般で言えば、音楽とかゲームとか書籍とかその他諸々とかでたまにチャートに載ってるのを視聴したりチャートを紹介する番組を見たりして気にいったら買ったりもする、ということはあるけど積極的にチャートを見たり調べたりってことはまず無い。とりあえずチャート上位=売れてるモノは無難だろうぐらいには思うけど、無難であることと自分の趣味に合うかどうかは全く別なので云々。

自分はオリコンのチャートを信じているか

設問が悪い(ぉぃ)。というか、まるっきりインチキだなんて思ってはいないけど、ある程度の操作は可能だろうとは思ってる。たまにネットで「○○を初登場1位にすべく一斉に購入しようぜ」なんてのを見ることがあるぐらいで、それがファンによるものであれレーベルの関係者によるものであれ、恣意的な購入で販売実績を増やすことは可能。ただそういう現象も含めての数字だってことで、それは信じる信じないの問題じゃなくて、単にそういうもの。他に、オリコンの雑誌に広告を出すと数字が水増しされるとか、袖の下とか色々と噂だけはあるようだけど、そんなのは信じるも信じないも無い。その真偽を知る立場にはいないし、あえて言えば「どうでもいい」。

自分はどちらの言い分が正しいと思うか

思う、というだけなら烏賀陽弘道氏の言っていることの方がもっともらしいと思う。けど思うだけで別に根拠は無くて、結局んとこどちらが真実であるのかは私にはわからないし、上に書いているようにあまり興味も無いし、裁判するなら裁判の中ではっきりさせればいいことだとだけ思う。ただ、オリコンの主張が全面的に正しいのだとしても、今回のやり方についてはやっぱり憤りを感じざるを得ない。

自分は 5000万円という金額をどう思うか

安い、と思う。風評被害で経営が傾く例もあるし、一度悪い印象を持たれたら回復には長い年月がかかるなんてのもザラなわけで、会社の規模とか考えると被害金額としては格安なんじゃなかろうか。
ただ、実際に事実誤認があったとしても、その事実誤認の内容と「世間の感覚」とのズレがあるかどうか?、つまり事実誤認を記者が雑誌の記事にコメントとして載せたことによる実際の被害はあったのか?という問題はあるような気はする。

自分は何に対して憤ったのか

オリコンのやったことで言えば

  • 企業が、一個人に対して 5000万円の損害賠償を求める裁判を起こしたこと

何故これに憤ったかと言えば、これをやった時点で既に烏賀陽弘道氏に多大なダメージがあるから。

  • 受けて立たなければ、5000万円の賠償責任が発生するが、一個人が簡単に払える額では無い。
  • 受けて立つとしても、弁護士費用とか裁判中の仕事をどうするかなど考えると、生活が成り立たない。

もちろん、裁判をやって完全に勝利すればかかった費用を相手に払わせるとか可能だし、もしかしたら反訴して裁判中に仕事ができなかったことに対する補償を求めたりもできるのかも知れないけど、そこまでの期間をどうやって耐えるのか、よっぽどの蓄えでも無いかぎり誰かの支援無しには無理だろうと。
言い方を変えれば、オリコン側が起こした訴訟に対し、烏賀陽弘道氏には、どちらの言い分が正しいかどうかに全く関係ない次元で、実質的に対抗手段が無い。
挙句、オリコンがネットでの炎上を受けて出した声明がこれ。

ただ、我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます。

烏賀陽弘道氏に訴訟への対抗手段が無いのをわかっててこんなことを言っているのだったら、それは結局、暴力的な手段で自分に都合の悪い言説を圧殺していることに他ならないと思う。
無論、訴訟を起こす権利を行使すること自体は合法だが、だからと言って社会的に許されることとは思えない。

自分は、オリコンはどうすべきだと思ったか

  • 訴訟を起こす前にもっと話し合いの場を持つ
  • 訴訟するなら相手としてサイゾー編集部も入れる

というより、何故そうしないのか不思議。

法の穴

この件に限らず、法ってのは世の中の進歩(技術の進歩やら手口の進歩やらその他諸々やら)について行けてないとこがあるもので云々。実際、例えば悪徳業者が全くの言いがかりで貧乏人に訴訟をふっかけたら、どんな無理難題を・・・。というわけでなんか法整備を考えないといかんのでは無いかと思う。